日本では、菓子パンやお菓子などに使われる油のほとんどが、加工植物油やマーガリンやショートニングなどの油です。これは「トランス脂肪酸」を多量に含んでいることが、今世界中で問題視されています。
トランス脂肪酸とは何か?
トランス脂肪酸は、体重増加、心臓疾患、不妊症(女性・男性共に)、子宮内膜症などの婦人科系の病気、アルツハイマー病などの健康上の問題との関連性が指摘されていますが、それだけではなく、精神状態や行動にも深刻な影響を与えることが分かってきています。
私たちの精神状態は、毎日の食事からも多くの影響を受けています。トランス脂肪酸を含む食事を日常的に摂取すると、うつ状態になるリスクが非常に高まるとも指摘されています。また、攻撃的になったり、怒りっぽくなったり、イライラした気分になったりしてしまうことと関係があることも研究により分かってきました。
トランス脂肪酸は、トースト、唐揚げ、ポテトチップス、ドーナッツ、クッキー、ケーキ、揚げ物、スナック菓子、レトルトカレーなどのほとんどの加工食品に含まれています。そのため、意識しないでいると知らず知らずの内に多量に摂取していることもあり得るのです。
各国のトランス脂肪酸への対応
これほどに健康被害が指摘されているトランス脂肪酸ですが、多くの食品に含まれているにも関わらず、日本では使用規制などを定めた法律がありません。さらに原材料欄に「トランス脂肪酸」と明記する義務もないのです。日本の製品表示では、マーガリン、ショートニング、植物油脂、加工植物油脂と記されています。
一方、諸外国ではトランス脂肪酸がすでに厳しく規制されています。デンマークでは2003年、スイスやオーストリアでは2009年から使用すらも禁止されています。少なくともほとんどの国では、原材料欄に「トランス脂肪酸」と明記することが義務付けられています。アメリカでも近年全面禁止の法律ができました。
しかし、日本には表示義務すらないのが現状です。この違いは大きいでしょう。
日本の製品の多くがトランス脂肪酸が含まれる油を使用する理由
トランス脂肪酸は安定性が高く、使用すると加工食品の保存期間を延ばせたり、さくさくした直感やクリーミーな食感を出しやすいという特徴があります。そしてバターや質の良い油よりもずっと安価に手に入ります。そのためお手頃な価格で日持ちが良いお菓子を作ることができるのです。
しかし、その目先のおいしさや手頃な価格と引き換えにして、そのような様々な不安がある油を私たちの体に取り入れたいでしょうか?
日本の規制対応の遅さなどは、私たち消費者にも問題があります。原材料を見て体の一部にしたくないものが含まれている製品を購入しないことが、製造側の意識を変えることに繋がるかもしれません。
